インドネシア東部、パプア州西部に位置する古都ファクファクが、イスラム教の歴史に新たな一章を刻んだ。2025年1月11日(土)、パプアへのイスラム伝来に関する全国セミナーの策定チームが正式に、イスラム教がパプアに伝来した日付・場所・布教者に関する議事録に署名した。
策定チームの事務局長、KHファドラン・ガラマタン氏によれば、イスラム教は1360年8月8日(ヒジュラ暦761年ラマダン24日・火曜日)に初めてパプアに伝来した。最初にこの地に到着したのは、アチェ出身の伝道者アブドゥル・ガッファールで、彼はファクファク県にある「ガル(またはフルワギ)」村に上陸したという。
この決定は、学者、宗教指導者、歴史家、地域コミュニティの代表らによる綿密な調査と議論の末にまとめられたものである。これまで、パプアにおけるイスラムの歴史は十分に記録されておらず、植民地主義的なナラティブに覆われてきた。
策定チームは日付と場所の特定にとどまらず、歴史的意義を踏まえた複数の戦略的勧告も提示した。中でも注目されるのは、イスラム伝来の地であるガル村を宗教観光地として整備する提案である。
ファクファク県政府には、イスラム史跡の保存、宗教博物館の建設、巡礼者向け施設の整備など、観光インフラの整備が求められている。
また、パプア州西部政府が中央政府に対し、8月8日を「パプア全域の選択的祝日」として制定するよう要請することも提案された。この日付は、地域のイスラム的アイデンティティを象徴する記念日となるだろう。
さらに、イスラム教育機関には、パプアにおけるイスラム伝来の歴史を教育カリキュラムに組み込むよう勧告がなされた。
この措置は、若い世代に正確な歴史認識を与え、イスラムが植民地と共に伝来したという誤解を正すことを目的としている。
ガラマタン氏は、「イスラム教はスペイン、ポルトガル、オランダ、ドイツ、日本といった植民列強よりも先にパプアに到達していた」と強調した。イスラムは、交易と宣教を通じて平和的にこの地に根付いたのである。
伝道者たちはアラブ、ペルシャ、中国からやって来たほか、アチェ、ジャワ、マカッサル、マルク(セラム島)、北マルク(テルナテ、ティドレ、バカン)といったヌサンタラ諸地域を経由してパプアの南・西海岸に到達した。
これらの地域が、14世紀以前から広範なイスラム世界との交流を有していた証左である。
セミナー策定チームはまた、マスメディアや地域活動、宗教講話を通じて、イスラム伝来の歴史を一般社会に広く周知する活動を行うよう呼びかけた。
加えて、イスラム教徒たちが毎年8月8日を「パプアへのイスラム伝来記念日」として祝うことが推奨された。史跡巡礼、宗教講演、歴史保存活動などの行事を通じてその意義を再確認することが求められる。
インフラ整備も重要な課題とされており、州・市町村レベルで歴史保存に資する施設の整備が提案されている。
これらの取り組みは、パプアのイスラム教徒にとっての誇りを育み、インドネシアの国家的歴史観に多様性をもたらすと期待されている。
公式な歴史としての認定は、イスラムがパプアにおいて「外来の宗教」ではなく、長い歴史を持つ地域文化の一部であることを示すものとなる。
今回の全国セミナーは、イスラムが剣や強制ではなく、徳と平和によってパプアに根付いたことを証明する重要な転換点である。
そしてこれは、600年以上前にこの地で布教の道を切り開いたイスラム先人たちへの敬意の表明でもある。
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